相続放棄とは?不動産がある場合の注意点と手続きのポイントを解説
相続放棄をすると不動産はどうなる?借金を理由に放棄を考える人も多い中、不動産が絡む場合には特有のリスクがあります。注意点と手続きの流れをわかりやすく解説。
はじめに
「親が亡くなったけど、借金も多いし家もボロボロだから相続したくない…」
そんな時に検討されるのが相続放棄です。特に不動産が絡む場合、単に放棄すればよいというわけではなく、管理責任や法的な落とし穴に注意が必要です。
この記事では、「相続放棄とは何か?」という基本から、「不動産がある場合の具体的な注意点」までをわかりやすく解説します。
相続放棄とは?|基本的な定義と効果
相続放棄の法的意味
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産や借金を一切受け継がないとする手続きのことです。家庭裁判所に申述し、受理されれば最初から相続人ではなかったことになるという強い効力があります。
つまり、プラスの財産(預金・不動産など)もマイナスの財産(借金・ローンなど)も一切引き継がなくなるということです。
単純承認・限定承認との違い
- 単純承認:何も手続きをしなければこれ。すべて相続。
- 限定承認:財産の範囲内で負債を返済。あまり利用されない。
- 相続放棄:最初から相続しなかったことになる。
放棄は、明確な意思表示と手続きが必要です。
相続放棄が選ばれる主なケース
借金・負債が多い場合
故人に借金や住宅ローン、保証債務などが多い場合、それを相続してしまうと自分が支払う義務を負ってしまいます。
このような場合は相続放棄を選ぶ人が多くなります。
不要な不動産・空き家を相続したくない場合
- 住む予定のない遠方の空き家
- 固定資産税だけがかかる老朽物件
- 建物解体や土地整備が必要な費用負担が重い不動産
こうした物件を持ちたくない、という理由で相続放棄を選ぶケースも増えています。
不動産がある場合の相続放棄の注意点
放棄しても管理責任を問われる可能性がある
相続放棄が認められても、不動産の管理義務から即座に完全に解放されるわけではありません。
相続放棄が完了しても、次の相続人(第2順位・第3順位)が現れるまでの間、**「相続財産管理人が選任されるまでの暫定的な管理義務」**があるとされています(民法第940条)。
例えば、空き家の瓦が落ちて通行人に怪我をさせた場合、放棄済みでも損害賠償責任を問われることがあります。
放棄後も相続人がいないと「管理義務」が残る
すべての相続人が放棄すると、「相続財産法人」として処理されますが、裁判所への申立てや専門家への依頼が必要になります。
放置してしまうと、不動産が宙に浮いた状態となり、役所から草刈り命令・特別管理費請求などが来ることも。
相続放棄の手続きと期限
家庭裁判所での申述手続き
相続放棄をするには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出します。
必要な書類:
- 相続放棄申述書(家庭裁判所HPから入手可)
- 被相続人の戸籍謄本
- 申述人(あなた)の戸籍謄本
- 申立手数料(収入印紙800円)など
3ヶ月以内に手続きする必要がある
相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行わないと、**単純承認(=相続を承認したとみなされる)**になります。
調査が必要な場合には、「熟慮期間の伸長申立」も可能です。
よくある誤解とリスク
相続放棄しても勝手に不動産を処分するとNG
放棄をした後に、不動産の賃貸契約を結んだり、売却行為を行ってしまうと、それは**「相続を承認した」とみなされて放棄が無効になる可能性**があります。
放棄前に財産をいじることは避け、慎重な判断が必要です。
他の相続人に迷惑をかける可能性
自分が相続放棄すると、次の順位の相続人に権利と義務が移るため、「いきなり不動産を相続させられて困った」というケースも。
相続放棄をする際は、他の相続人との事前の連携や情報共有が大切です。
まとめ|不動産がある場合の相続放棄は慎重に判断を
相続放棄は、自分を借金や不要な不動産から守る有効な方法です。
しかし、「不動産がある場合」には独特のリスクがあるため、単純に「放棄すれば終わり」とは考えないことが大切です。
大事なポイント:
- 放棄しても一時的に管理責任が残る可能性あり
- 勝手な処分行為はNG、放棄が無効になることも
- 他の相続人や関係者と連携して進めることが重要
不安や不明点がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に早めに相談しましょう。
written by

ブルズHQ編集部