被相続人が借金を残していた場合の対処法|相続放棄・限定承認・注意点を解説
親や親族が借金を残したまま亡くなったらどうする?本記事では、借金相続の基本、放棄や限定承認の選択肢、手続きの期限と注意点を詳しく解説します。
はじめに
相続と聞くと「財産を受け継ぐ」イメージが強いですが、実際には借金(負債)も相続の対象です。
「親が借金を残して亡くなった」「住宅ローンがまだ残っている」「知らなかった借金が出てきた」
こうしたケースでは、正しい知識と迅速な対応が重要です。
この記事では、被相続人が借金を残していた場合の具体的な対処法をわかりやすく解説します。
借金も相続の対象になる|基本ルールを理解しよう
相続はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ
民法では、相続とは被相続人の一切の財産的権利・義務を包括的に承継することとされています。
つまり、現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金やローン、未払金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
借金の種類は関係なく対象になる
以下のような債務は、原則としてすべて相続対象です:
- 消費者金融・カードローンの借金
- 住宅ローン(団信に未加入の場合)
- 知人からの借入
- 税金・未払医療費
- 連帯保証債務
「借金だから相続しない」ということは自動的には成立せず、放棄等の手続きをしない限り、相続人に支払義務が移ります。
選択肢① 相続放棄で一切の権利・義務を断つ
家庭裁判所への申述が必要
相続放棄とは、「財産も借金も一切相続しません」と宣言する制度です。
これは家庭裁判所に**申述(申し立て)**することで正式に成立します。
放棄が認められると、初めから相続人ではなかったことになるため、借金の請求を受けることもありません。
3ヶ月以内の期限に注意
放棄には期限があります。
相続が開始されたこと(=死亡を知った時)から3ヶ月以内に申述しなければなりません。
※この「熟慮期間」は、延長を申し立てることも可能です。
選択肢② 限定承認で損しない相続に
財産の範囲内で借金を支払う制度
「プラスの財産もマイナスの財産も正確にわからない」
そんなときは「限定承認」という選択肢があります。
これは、相続財産の範囲内で借金を返済し、それ以上の負担を負わない制度です。
たとえば:
- 相続財産:1000万円
- 借金:1200万円 → 1000万円まで支払い、残りは支払わなくてOK
全員一致が必要で手続きが複雑
ただし、限定承認は相続人全員が共同で申し立てなければならないという条件があり、手続きも相続放棄より複雑です。
専門家の関与がほぼ必須と考えたほうが良いでしょう。
選択肢③ 単純承認|何もしなければ相続することに
資産価値のある財産に触れると承認と見なされる
相続が始まって3ヶ月を過ぎる、あるいは不動産の名義変更や預金の引き出しなど**「相続人としての行動」をとると、自動的に単純承認**したと見なされます。
一度単純承認すると、借金も含めてすべての財産・債務を引き継ぐことになります。
知らぬ間に借金も相続するリスク
「相続放棄をしようと思っていたのに、通帳を下ろしてしまった」「不動産の登記を変更した」
こうした行為で、意図せず単純承認になってしまうケースもあります。
慎重に対応しましょう。
よくある注意点と誤解
「名義変更=相続放棄不可」の落とし穴
放棄するつもりであっても、不動産の名義変更や財産の処分をしてしまうと、放棄が無効になる可能性があります。
財産には一切手をつけず、まずは調査・相談から始めましょう。
保証人・連帯保証人の立場に注意
被相続人が誰かの保証人になっていた場合、その債務も相続対象になります。
また、相続人自身が生前に保証人となっていた場合は、放棄しても免れないため、注意が必要です。
まとめ|借金相続は知識とスピードがカギ
| 選択肢 | 内容 | メリット | 注意点 | | ---- | --------- | ------------ | -------------- | | 相続放棄 | 相続を完全に拒否 | 借金も引き継がない | 3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述 | | 限定承認 | 財産の範囲内で相続 | 財産以上の借金を負わない | 全員一致が必要、手続き複雑 | | 単純承認 | 何も手続きしない | すぐに財産を使える | 借金も全額引き継ぐリスク |
借金があるかどうかわからない場合や、金額が大きい場合は、まずは財産・負債を調査し、早めに司法書士や弁護士に相談することが重要です。
判断が遅れると、思わぬ負担やトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
「借金の相続」こそ、スピードと知識が問われる分野です。冷静に、そして計画的に対応していきましょう。
written by

ブルズHQ編集部